あらゆる仕事において、複数の作業を同時進行させるマルチタスクは必須のスキルとなっています。職場を見渡すと、周囲は「会話しながらPCを操作する」「会議に参加しながらメモをとる」といった行動を当たり前にできているのを目にするでしょう。しかし、ADHDの社会人にとって、それが至難の業であることもしばしば…。
今回の記事では、ADHDであるとなぜマルチタスクが困難であるか、そして、マルチタスクを少しでもうまく実施する方法について紹介していきたいと思います。
マルチタスクが少しでもできるようになるだけで、業務の効率をこれまでよりも向上させ、「自分は仕事を柔軟にこなせない」といったコンプレックスから抜け出すことができます。

マルチタスクが苦手なADHDの社会人の実態
マルチタスクは、複数の作業を同時並行や短期間で切り替えながら同時進行で行う能力のことで、作業をするときの重要度・緊急度の見極めといった柔軟性が必要なものとなっています。
ADHDでは実行する難しく、苦手な分野といえるでしょう。
仕事において、ADHDの社会人はマルチタスクがどのように苦手なのでしょうか?ADHDの方の実際の苦労について見てみましょう。

1つの作業に集中していると、他の作業のことはほぼ全部忘れてしまう。その後のスケジュールや優先度の高い作業なども無自覚に無視して進めてしまうため、「仕事の効率が悪い」「融通が利かない」と周囲から思われていると感じる。

次々に舞い込んでくる仕事を処理しようとするものの、少し手を付けてほかの作業に移ってしまい、ほとんどが未完了のまま時間が過ぎてしまう。1個ずつ対処しようにも、それぞれの作業に切り替えるのに頭が付いていかない感覚がある。
なぜADHDの人はマルチタスクが苦手なのか?

ADHDの人々がマルチタスクを苦手とする理由は、不注意や衝動性など、障害の特性に起因しています。
ADHDがあるとマルチタスクがどのように苦手なのか、以下の2つの主な要因を解説します。
■整理整頓の苦手さ
ADHDの人々の中には、物事を整理したり優先順位をつけたりすることが難しいという特性を持つ人が多いです。
このため、未処理の業務やタスクが増えると、タスクそのものを忘れたり、スケジュールを見ずに先延ばしにしたりすることがよくあります。
整理整頓が苦手なため、仕事が滞りやすくなります。
■新しいアイデアへの気散らし
ADHDの人は発想力に富み、新しいアイデアが次々に浮かびます。
この特性は一見ポジティブですが、やろうとしていたことから意識が逸れたり、新しいアイデアに夢中になって優先順位を見失ったりすることがあります。
つまり、ADHDの人は新しいアイデアに気を取られやすいため、マルチタスクを困難にしています。
このように、ADHD特有の脳の働きによってマルチタスクを邪魔してしまっていることが、マルチタスクが苦手な原因となっています。
決して、周囲の健常者の方と比べて劣っているわけではなく、ADHD特性故の向き・不向きだと前向きに捉えていきましょう。
また、特性を理解し、整理整頓や優先順位の付け方に工夫を凝らすことで、マルチタスクに対処する方法を見つけることができます。
そして、実際にADHDの人が効果的に仕事の作業を進めていくうえで、独自の対策やサポートが必要です。
マルチタスク実践のための対策
ここからは、ADHDの人が苦手なマルチタスクを、仕事において実践するための対処するための対策について紹介します。これらの対策は、ADHDの人が仕事や日常生活で効果的にマルチタスクをこなすための方法として役立つでしょう。
①ToDoリストを作る
ToDoリストは、ADHDの人にとって非常に有用です。実践することで、やるべきことを視覚的に整理し、優先順位を付けることができます。
重要なのは、ToDoリストを作成するだけでなく、項目を実行したときにチェックし、進捗状況を確認することです。
自分の業務の進捗が一目でわかるようになるので、作業を同時進行でこなそうとするときに、漏れが無いかといった心配を払拭することができます。
さらに、ToDoリストで作業の進捗が見えてくることで、「自分が着実に仕事を終わらせられている!」という達成感を感じ、モチベーションを高めることもできます。
ToDoリストの書き方を詳しく解説している記事があるので、参考にしてみてください。
②タスクは1つずつ片付ける
残念ながら、健常者のように柔軟に頭の中を切り替えていきながら同時に複数の作業をこなすことは困難です。
そのため、マルチタスクを避け、1つのタスクに集中することが大切です。
これにより、タスク間の切り替えが減少し、注意散漫を軽減できます。1つの仕事を完了したら、次のタスクに移る前にリラックスする時間を取ることも重要です。
また、ADHDにはハイパーフォーカスという、関心を向けたものに対して驚異的な集中力を発揮する特性があります。
ほかのものに気を取られず1つの作業に集中できることで、同時並行よりもスピーディに完了させることが期待できます。
③タスクの整理だけをする時間を作る

タスクが多くて混乱する場合、専用の整理時間を設けましょう。
この時間には、すべきことを洗い出し、優先順位を再検討します。
その日のタスクを前もって予測し、必要なタスクだけを選んでスケジュールを組むといった方法もとても有効です。これにより、次に何をすべきかが明確になります。
また、タスク確認の時間は朝イチ、休憩時間後など、区切りのいいタイミングで分けて数回実施するとよいでしょう。
急に舞い込んできた急ぎの作業があった際などにも柔軟に対応でき、タスク漏れを防止しやすくなります。
④すぐに手帳やスマホにメモをする
新しいタスクやアイデアが浮かんだら、すぐにメモを取ること習慣づけることで、忘れたことを思い出せるようになります。
思い浮かんだアイデアや思い出した作業などを忘れたくなくて、頭にとどめてしまうことも、経験したことがあるるかもしれません。
そんなときは、手帳やスマホにメモすることで、後で思い出せるようにし、安心して作業に集中することができます。
情報を脳で処理しきれない分、手近な道具を活用してカバーしていきましょう。
⑤メモやリストをすぐに出せるようにする
メモやリストが必要なときにすぐに取り出せるようにしておくことはとても重要です。
メモがすぐに目に入らないと、せっかく記録した新しいタスクや重要な情報を忘れることがあります。机の上、カバンの中、ポケット、スマホのホーム画面など、いつでも目を向けた時に確認できる場所に配置しましょう。
これにより、タスク管理がよりスムーズになり、作業の抜け漏れも防止できます。
⑥メモやリストは一つの媒体で管理する
メモを取るときには複数の場所に散らばらせないようにしましょう。
忘れたくないことをメモしたのに、そのメモを探すのに時間がかかってしまうこと、あるあるですよね笑。
メモ帳、スマホアプリ、デスクトップ上など、一つの場所に統一してメモをしておくことで、整理と見直しが簡単になります。
ToDoリストと雑多なことを書くメモについては、別々に記録しておくのもいいかもしれません。
⑦周囲の人にタスクの進捗をチェックしてもらう
クローズ就労の場合は少しハードルが高いですが、理解者が周囲にいれば、作業漏れを起こさないよう助けを求めてみましょう。
タスクを一つずつ片付けるようにしていても、新しいタスクや情報が入ってくると、気を取られてしまうことがあります。
同僚にタスクの進捗を確認してもらうことで、ミスや忘れ物を減らすのに役立ちます。
一緒に働く人と協力体制を築くことは、タスクの効率化に役立ちます。
⑧タスク管理ができるアプリやツールを使う
タスク管理には、スマートフォンアプリや専用のツールを利用することもおすすめです。
これらのツールにはリマインダー機能やカスタマイズオプションが含まれており、タスクの整理や追跡が簡単になります。
個人的には、自分のタスクがサブタスク(一つの作業完了に必要なより細かい作業など)と一緒に一覧表示されるようなツールがおすすめです。
以下の無料ツールが提供されているので、試しに使ってみながら、自分に合うものを探してみるといいでしょう。
- Asana
- Microsoft ToDo
- Google ToDo
これらの対策を組み合わせて活用することで、ADHDの人がマルチタスクを克服し、タスク管理を向上させることが可能です。個人の好みや状況に合わせて選択し、効果的に活用しましょう。
まとめ
ADHDだと、周囲ができているように仕事を完了させていくということがどうしても難しい場面が多々あります。
残念ながら、「マルチタスクをこなして、同時に複数の仕事を終わらせられる人が優秀」という考え方は一般的なものになっており、ADHDには働きづらい社会になっているかもしれません。
今回紹介したような手法を活用するといった工夫を通して、健常者の働きにも通用するような能力を身につけましょう。
自分なりの仕事の仕方を身に着けることで、ADHDによるハンデを乗り越え、皆さんの隠されたポテンシャルを発揮できるようになるでしょう。

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